彼女の幸せ。
私の友人、A子はだいぶ前から「結婚はしない」と決めていた。
恋愛はしても、一般的にゴールと呼ばれる結婚は目標ではないと言う。
彼女が結婚に興味がなくなってしまったのは、彼女が育った環境が関係しているかもしれない。
父親は酒浸りで、妻や娘に手を上げることも少なくなかった。
母親はそんな夫に愛想を尽かして、娘を置いて家を出て行ってしまった。
それ以来、A子は社会人になるまで父親と暮らした。
歳を重ねるごとに手を上げることはほとんどなくなっていったが、父子の口論は絶えなかった。
そんな生活が続いたせいか、A子は結婚というものに全く興味がなくなってしまったのだ。「興味がない」と言うよりも、「嫌悪している」と表現する方が的確かもしれない。
二十代後半、彼女は友人の結婚式で「次はA子の番ね」と言われた時は、何も言わずに微笑んでいた。それから数か月後の女子会で、
「私は結婚したいと思わないし、子供が欲しいとも思わない」
と話していた。
両親のせいで一度も結婚したいと思ったことがない、自分のような境遇になるかもしれないから子供は産みたくないんだ、と。
理由が理由だけに、私もほかの友人たちも、「結婚しない人生だってあるよね」といった言葉くらいしかかけられなかった。
そんなA子に、最近彼氏が出来たと告白された。
年齢的にもそろそろ落ち着きたいと語る彼女に、「結婚するの?」と聞いてみたが、それはないと返された。
お互い結婚や子供に興味はないから、ただ二人で一緒に暮らすのだ、と。
婚姻という契約はしたくないけど、いつまでも一人は寂しい。
彼とは利害が一致したからずっと一緒にいられそうだと嬉しそうに笑っていた。
A子の言う「幸せ」は、相思相愛ならいつかは結婚して子供を…と考える私には理解しがたいが、だからといって彼女のような生き方が「幸せじゃない」とは言い切れない。
それどころか、男女平等・共働きが当たり前な世の中が進んでいけば、もしかしたらA子のような生き方を望む女性が増えるかもしれない。
幸せは人それぞれ。
A子にとってはこれで「婚活完了」なのでしょうね。